今日は、たった1日しか生きることが出来なかった仔猫のお話です。
「お腹の大きなノラ猫の遺体を見つけた。片付けようとしたら、お腹の中で鳴き声がする。どうしたら良い?」という電話がありました。
「そんなことってあるんですか!?」
ご存知の通り、子宮の中の水が入った袋の中に赤ちゃんは漂っています。呼吸はしていないので、鳴き声を出すことはありません。
まして母猫が亡くなっているなら、胎盤からの血液も止まってしまい、赤ちゃんは酸素を得る手段がなく、やっぱり亡くなってしまっているはずです。
理屈ではわかっていても、万が一と思うと診ないではいられません。
「直ぐに連れて来て下さい」と伝え、その万が一に備えて、看護師に全ての準備を整えてもらいました。
残念ながら母猫は亡くなっていました。しかも時間が経っていて、ハエが卵を産んでいました。
大きな臨月のお腹を丁寧に触り、聴診もしましたが、胎児の反応はありませんでした。
念のため、産道出口を触ったところ、何とかすかに「ミャー」という鳴き声が聞こえたのです。
「生きてる!切ろう!!」
お急ぎでお腹を開けたら、母猫の内臓は数ヶ所損傷し、腐敗が始まっていました。
子宮を確認したら、一番産道の出口に近い子だけが生存し、3匹は亡くなっていました。
母猫の死因は交通事故死と思われました。激突の衝撃で子宮内の胎膜が破れ、産道近くの赤ちゃんの自発呼吸が始まり、何とか外部の酸素が吸えていたことがわかりました。
奇跡に奇跡が重なって、 今生きてる命。何とか救いたいと思いました。
小さな命は女の子でした。
ミラクル(奇跡)と呼ぶことにしました。
でも、事態は深刻でした。
彼女に付いていた胎盤は腐敗して悪臭を放っていました。
抗生物質と点滴、ミルクの強制給餌、酸素吸入、保温など、あらゆる手立てを試みましたが、ミラクルはママと兄弟の後を追って逝ってしまいました。
生まれ変ったら、絶対に一緒に暮らそうね!!